点字による試験

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点字による試験

 点字による試験は,共生社会の理念のもと,受験の機会均等の実現のために,基本的には大学等の試験実施機関がそれぞれの責任によって行うものとされています。実際には,受験者の学力や能力等を正しく評価して試験の目的を達成するために,様々な配慮が必要となってきます。また,時間延長等のために試験時程がずれるなど,実施にあたっても運用面での調整が必要となります。

試験点訳の特性

 点字問題の内容は,一般の試験問題と基本的に同じです。また,点字表記は,日本点字委員会が定めた日本点字表記法および視覚特別支援学校の点字教科書で用いられている記号と表記によって作成します。ただし,問題の内容によっては点字問題として成立しなかったり点字では解答できなかったりする場合もあるため,専門的な観点からの点訳が必要となります。
特に近年の試験問題は図や表を多用したり写真等の視覚的な要素を多く取り入れたりする傾向があり,点字試験として成立するかどうかの見極めが大切となります。

試験点訳の実際

 試験問題の点訳は,事前に試験実施機関と綿密な打ち合わせをして行います。試験当日に滞りなく点字による試験を実施するために,点字で読み,点字で解答する問題として適切かどうか,出題者と協議をした上で点訳を開始します。 通常は試験の前日までに問題の点訳を終えますが,試験当日の早朝から点訳を行うこともあります。いずれにしても,限られた時間内で正確な点訳を行うために,通常1人の受験生に対して10人程度の点訳者(校正者,墨訳者を含む)が必要です。同じ科目の受験者が複数の場合も,点訳に要する時間はほとんど変わりません。ただし,図版の作成には多くの時間が必要となります。

墨字の試験問題と点訳された試験問題の写真
墨字の試験問題と点訳された試験問題

点字による解答

 受験者は、点字盤や点字タイプライターを用いて点字で解答することが通例です。また、点字では筆算が困難なことから算盤(そろばん)の使用が認められています。
解答には点字用紙を用い、試験後、解答用・下書き(計算)用を受験者自身が整理して提出します。点字用紙は入試点訳事業部が準備します。

点字盤の写真
点字盤

表面作図器(レーズライター)の写真
表面作図器(レーズライター)

定規(盲人用)の写真
定規(盲人用)

答案の墨訳

 回収された点字答案は,ただちに普通の文字(墨字)で通常の解答用紙に記入します(墨訳)。点字には漢字がありませんが,墨訳では点字の答案を漢字仮名交じり文にして記入します。また,点訳の際の変更点等を踏まえて墨訳を行うため,点訳に携わった者が墨訳を行うことを原則としています。

セキュリティの確保

 試験点訳という性質上、セキュリティの確保を最も重視しています。前日まで、または当日点訳のいずれの場合においても、受験生との接触が起きない物理的に隔離された場所で、スマートフォン等の通信機器の使用を制限した上で作業を行います。作業は長時間にわたる為、飲料や食事の提供を依頼しています。
点訳のために提供された原問題(電子データ含む)、作成した点字問題、点字問題の電子データなどを実施機関に提出し、作業に用いたパソコンのデータを実施機関の担当者立ち会いの上で消去して退出します。それ以外に関しても、セキュリティ確保についてはその都度、実施機関と協議します。

点訳・墨訳にかかる費用

 点訳料は、点字や図版の1ページあたりの単価と点訳枚数(できあがりの点字枚数)をもとに算出します。このほか、点字プリンタやパソコン等の運搬・設置の費用および遠隔地の場合の出張費などがかかります。これらの費用は実施機関の負担になりますが、国立大学法人の場合は文部科学省から、私立大学の場合は日本私立学校振興・共済事業団からの補助金制度があります。

点字問題作成上、特に配慮を要する事項

以下のいずれの場合も出題者と十分に協議して対応します。

1.解答の字数制限
 解答に字数制限がある場合や、解答用紙のマス数や大きさによって事実上字数が決まる場合は、原問題の字数に該当する点字のマス数を記すことを原則としています。

2.表音文字の特性
 点字は表音文字であるため、同音異義語の中には意味を類推するのが困難なものがあります。また、漢字情報がないと意味が容易に推測できない場合もあります。このような場合には,出題者の許可を得て注をつける必要があります。また、地名・人名などの読みは、出題者に確認する必要が生じる場合があります。

3.漢字に関する出題
 漢字の読みの問題や書き取り問題は、点字問題としては成立しませんので、出題者と協議して代替問題を用意していただくか削除をします。代替問題としては漢字の熟語の意味を問う問題などが一般的ですが、点字常用者は日常的に漢字を見ているわけではないことを考慮し、問題の難易度が一般受験者の原問題の難易度と同等になるように配慮します。

4.図表の取り扱い
 全体像がとらえやすく細部までわかりやすい点字の図表を作成するためには、点訳技術はもとより、視覚障害者の図表認知に関する認識や問題の趣旨の理解が不可欠です。また、試験問題という特性から、時間内に指で触って処理できる内容と量であることが大切です。受験生がグラフや図を書くことが求められている場合は、視覚障害者にとって時間的にも技術的にも可能なものとなるよう、配慮することが必要となります。